ジェイル・ザ・ゲイム-Jail the Game-12











快晴の空の下、潮風が穏やかに吹く中、四人は歩いていた。
小高い丘の上に目的の場所がある。そこに向かってはしゃぎながらゆっくり歩みを進めた。
丘の上からは街が模型のように見え、遠くには海が青々と輝いている。

「気持ちいいな。」

少女は少年に向かって呟く。

「そうだな。」

素っ気無い答えだが、それが少年の普通の返答だった。


少年の手には手桶と柄杓。その妹の手には蝋燭と線香。少年の母親は花束を持っていた。
やっと目的の場所に着くと、そこには灰色の長方形の石がいくつも並んでいる。
それが墓地だということはすぐにわかった。

少女がかつていた世界にも墓地と呼ばれるものはあり、ここに似たような作りだったからだ。
それに漂う雰囲気が似ていた。
しっとりとした、厳かな空気を纏っている。

墓石に水をかけ、線香と蝋燭に火を灯す。線香独特の香りと煙が漂った。

「アリちゃんもお花、供えてくれる?」

小さな花の束を渡され少女は受け取った。

少年と、少年の妹と、少年の母親と、少女。
四人は互いに違う想いを胸に、花を墓石に手向けた。そして手を合わせて目を瞑る。

「ちょっとご挨拶に行って来るから、待っててね。」

少年の母親がそう言うと、妹もその後をついていった。


少年はじっと目を瞑っていた。
何を願っているのか、何を心の中で言っているのか、想っているのかはわからない。

「何をお願いしたんだ?」

少女が尋ねると少年は笑った。

「別にお願いしてる訳じゃねぇよ。話してたんだ。」

「話せるのか?」

「んー…一方的に伝えてるだけだけど。アリセのことも言っといた。たぶん親父なら聞いてくれてるさ。」

そういう習慣は少女にはよくわからなかった。
今まで自分の中にそういうものが無かったからだ。けれど少年がそう言っているのだから、きっと彼の父親は目を瞑って心で問いかければ、話ができるものだと感じた。

すると少年は徐にポケットから懐中時計を取り出す。
少女も同じように首から下げていた懐中時計を出した。

太陽が二つの時計を照らし、きらきらと輝かせている。

「ちゃんと、守ってるから。ちゃんとここにあるから、安心しろよ。」

少年は呟いた。
それにならって少女も心の中で呟いた。

私もちゃんと守っている。ここで生きている。そして信じているから、安心してくれ。

しばらくして少年の母親と妹が戻り、四人は帰路につくことになった。



三人の後をついて歩く。
波の音が遠くから風に乗って運ばれ、ここまで聞こえてくる。

ふと、少女は振り返った。

いつか会ったあの人がそこに立っていた気がしたから。
その人は名前も知らない人だった。大切な人の友人だと聞いた。
優しくて、大きな口で笑って、頭を荒々しく撫でてくれる。そんな人だった。



少女は微笑んでそっと口を開いた。



「ありがとう。」



その時柔らかな風が吹き、少女の黒く艶めいた髪を靡かせた。

あの風に乗って届いただろうか。
あの真っ青な空まで、真っ白な雲まで、あの人に届いたのだろうか。

空を見上げていると不意に後ろから声が飛んでくる。


「アリセー!置いてくぞーっ!」


大切な人のもとへ向かって、アリセは地面を蹴った。






fin.






inserted by FC2 system